2020年11月に著作者と和解した資格スクエアの盗作事件ですが、受講生を顧みないまま、新規受講生の募集が始まりました。
説明責任を果たさないまま物事を進めてしまうことは常識外れですが、予備校や通信教育を利用するのは受験テクニックを教わるためと割り切る人も皆無ではないでしょう。
しかし、民法や商法は常識的に判断すればわかる問題が出題されることも多く、盗作をするような資格スクエアが正しく指導できる可能性は高くありません。それでもなお、常識に含まれないものなら問題ないと考えて、例えば常識と異なるような法律の内容や、あなたには馴染みがないことでも、他の人は常識であるようなことであったり、自分ではどうやるのかよく分からない勉強方法等を学ぼうとするかもしれません。
資格スクエアの盗作は、行政書士試験に必要な常識以外のものを教えてくれるどころか、必要な情報を自分で集めたり、推測したり、わざわざ合格に遠い方法で勉強することになってしまうことを示唆しています。それでも資格スクエアを選びますか?
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資格スクエアでは民法の勉強時間が長くなりすぎる危険あり
資格スクエアは、司法試験の問題集を制作する時に、早稲田経営出版の書籍の解説部分を、条文・判例の引用はそのままにして、解説部分を要約・修正していたと報告されています。
選択肢の正誤を判定する際に、条文が分かっていれば正誤が分かる選択肢は条文を提示すれば済みますし、判例が分かっていれば正誤が分かる選択肢は判例を提示すれば済みます。しかし、条文が頻出の条文なのか、普通に勉強しているとなかなか触れない条文なのかは、受講生によって異なります。
例えば、ある程度勉強が進んでいるなら、即時取得について定められた民法第192条を知らない人はいないはずです。
しかし、民法第195条を知っている人はどれくらいいるのでしょうか。善意で他人のペットを1か月飼育したら自分のものになるという条文になります。行政書士試験の民法について学習しているだけではなかなか触れることのない条文ですが、ペットについて詳しい人なら、民法を勉強していなくても知っていることだったりします。
ペット愛好者を集めて講義するなら、1ヵ月ルールのことだよと言えばわかるでしょうし、細かく解説する必要はないのですが、行政書士講座の場合は、解説の付け方に工夫が必要となります。
行政書士試験で問われたことがない条文が問われた時は、難問の部類に入れて、消去法で解答するように解説するか、今後問われる可能性がある条文と判断すれば、勉強しておくべき条文として解説する必要があります。
初学者が多い行政書士講座なら民法第195条は後回しにするべきですし、十分勉強した上級者が多い行政書士講座なら正面から扱っても良さそうです。
このように、受講生の層や学習進度によって解説を工夫しなければならないのに、他社の書籍に多少の変更を加えるような解説では、適切な解説になっている可能性があまりにも低くなってしまいます。
受講生のレベルより高いレベルの解説を付けられると、その解説を解説して貰わなければならなくなりますし、低いレベルの解説がついていると、わかり切った文章を長々と読まされることになってしまいます。
どちらも必要のない時間を使わされることになるのです。
要約が確実というわけではない
言葉を伝えていく伝言ゲームですら、数人経ると言葉が変化してしまうように、他人の言葉を正確に伝えるだけでも難しいのに、ましてや正確な内容のまま要約することができるのでしょうか。
さらに、元の書籍の解説を書いた人は、読者がその問題を解くのに必要十分な情報を入れているはずなのですが、要約してしまえば、問題を解くのに必要十分な情報ではなくなってしまう可能性が高くなります。
解説は、条文や判例・常識ではわかりにくいからついているものなのに、推理小説を読んでいるかのように、あれこれ推測しなければわかないようになっているのでは本末転倒です。民法の知識で問題を解くはずなのに、民法の知識に探偵並みの推理力を加えなければならないのなら、合格までの道のりは非常に遠いものとなります。
民法の解説が必要十分でないために、他の参考書などで調べなおす必要が出てくる資格スクエアは早期合格を目指す人にはおすすめできない行政書士講座になっています。
中には、誤植などを自分で修正しなければならないから、法的思考力が自然に身につくという非常にポジティブな口コミがあることを追記しておきます。
資格スクエアでは商法の勉強方法が合わなくなるリスクあり
資格スクエアの盗作の原因として、作業期間が短かったということが報告されています。作業期間が短いと盗作してしまうという因果関係は謎なのですが、少なくともタイムマネジメントは苦手であることが分かります。
タイムマネジメントとは、納期までの作業時間を管理することです。テキスト制作のような現場で重視されるものとしては、タイムマネジメントの他にコストマネジメントとクオリティマネジメントがあります。コストマネジメントは、制作に使われる費用を管理することで、クオリティマネジメントは製品の品質を管理することです。
この3つのマネジメントが重要とされるのは、何も考えずに作業をすると、うまくいかなくなるからです。例えば、納期を短縮された場合に、同じ予算で予定された品質のものを作るのは難しくなります。残業して作るとしても残業代がかかりますし、作業を速めれば品質は落ちてしまいます。
逆に考えれば、納期が短い時は、予算を増額するか品質を下げるかで対応すれば良いだけなのです。資格スクエアのテキスト制作スタッフは司法試験受験生も含まれているので、東京だけでもかなりの数になりますし、時給も高くしなくて済むはずです。作業時間が短ければ、人員を増やせば良いだけだったのです。
また、説明が長くなりそうな所は参考書の該当ページを示すだけにしたり、条文・判例は六法全書や判例集参照と書くだけにしたり、図表を付けないなどで品質を落すことでも作業時間を減らすことができます。
いくらでも対策があるはずなのに、盗作をしてしまうという結果になったのは、マネジメントが全くできていない証拠です。
顧客のニーズをとらえていない危険性あり
法律に経営用語のマネジメントは必要ないように思えるでしょうが、マネジメントができないとどうなるのでしょうか?
マネジメントの基本はドラッカーが言うように、顧客のニーズをとらえることです。行政書士講座の顧客は行政書士試験受験生で、ニーズは行政書士試験合格です。確実に合格できる教材を開発すれば自然に売れるでしょう。
しかし、行政書士試験は、過去の結果と大きく異なる場合に補正的措置を行い、10%程度の合格率になるように調整されるので、苦労して合格率が5割を超えるような教材を開発しても、使う人が増えれば、その教材で合格しにくいように調整されてしまいます。クオリティを上げるのは大変ですが、それに見合った結果が出にくいのが行政書士講座なのです。
調整されない程度の合格率になるような教材を作っても、行政書士の資格は医師免許のようにそれだけで高収入になるようなものではありませんし、行政書士講座は競合他社も多いので、あまり高くはできません。
そこそこの教材でそこそこの価格ならやはりLECやフォーサイトといった実績のある会社の行政書士講座を選ばれてしまうので、コスト面で優位に立つのも至難の業です。
資格スクエアのような後発の行政書士講座は、最後に残ったタイムマネジメントを鍛えるしかないのです。
行政書士試験は1年に1回なので、1年以内に合格したいと考える人がほとんどです。合格に必要とされる勉強時間も1000時間程度なので、1日3時間で1年間勉強すれば届きます。
しかし、1日3時間の勉強時間を取れない人もいますし、年度の変わる春から勉強を始めようと思う人も少なくありません。こういったニーズを取り入れるにはどうすれば良いのでしょうか。
法律の基礎となる憲法はしっかり学ばなければならないし、ボリュームがあって記述試験まである行政法・民法は十分に時間をかけるしかありません。残る商法をどのように時間をかけずに攻略していくのかがポイントになりますし、タイムマネジメントの見せどころになっています。
行政書士試験の商法は5問出題され、合格ラインの6割に達するためには3問正解する必要があります。学習量が多いわりに配点が低いので、商法を捨てて合格するという戦略を提示する人もいますが、神風特攻隊のようなものです。
資格スクエアでは運任せになる危険性あり
計算してみましょう。
法令科目は244点満点で、合格ラインは147点。仮に商法5問20点を捨てるとすると、224点中147点取らなければならなくなるので、65.625%の得点率が必要になってしまいます。
6割に達する人が1割程度しかいない試験で、6割5分を超える得点率に挑むのはかなり無謀です。さらに、範囲が広い民法や行政法は、一般的な行政書士試験用のテキストに載っていない問題を作るのは容易く、民法や行政法で6割5分を目指すとすると、どこまで勉強すれば良いのか分からないほどです。特に民法は難しいことが多く、6割に満たない場合にどこで取り返そうか考える必要があるほどです。
それなら条文数が少ない憲法を頑張ろうと思っても、憲法は5肢択一式5問20点と多肢選択式1問8点の28点分しかありません。憲法で満点を取ったとしても、0.8点足りませんし、憲法は条文数が少ない分、難問が出題されることがあるので、頑張っても満点は無理でしょう。
結局、限られた時間で合格するには、短時間で商法を3問正解できるようにするしかないのです。
短時間でテキストを制作しなければならない時に盗作をしてしまうなら、短時間で商法を勉強しなければならない行政書士試験ではカンニングするということになってしまいます。
しかし、不正は禁止されているので、神風特攻隊になれと指導しています。商法は「最低限の内容をテキストで押さえ、民法など重点科目に力を注いだ方がよい」とするのが資格スクエアの勉強方法なのですが、この勉強方法で合格できる人は運が良い人だけでしょう。
運任せではなく、行政書士講座でちゃんと勉強して合格したいと考えるあなたには資格スクエアの行政書士講座の勉強方法とは合わないのです。